スポーツ

さくら親児会

2008年09月07日 22:18

『障害者とスポーツ』(岩波新書)高橋明著・2004から抜粋

そもそも「障害者のスポーツ」という特殊なスポーツはありません。障害のためにできにくいことがあるだけだという理念のもとに、「何ができないか」ではなく、「何ができるか」に視点を向けて、用具やルールを工夫しながら行われているものを、「障害者のスポーツ」と呼んでいます。

 例えば、学校教育のなかで、いろんなスポーツが行われていますが、中学と高校ではバレーボールのネットの高さがちがっています。これは、中学生と高校生では背の高さがちがうという、身長のハンディキャップををカバーして、同じバレーボールを行うための創意工夫です。
  そのハンディキャップを目が見えない、片足がない、両足が動かない、耳がきこえないということに置かえてみる。障害にあわせて、プレーするのに不便なところを工夫すれば、障害のある人も、ない人も同じようにスポーツを楽しむことができるようになる。それが障害者のスポーツです。
 たとえば、障害者のスポーツで盛んに行われている車椅子バスケットボールは、コートもボールの大きさも同じ。ただ、車椅子に合わせてルールが少し変えられているだけです。車椅子テニスも同様です。
  シッティングバレーボールは、切断などで足を失った人のためのものですが、座って行うためにコートは狭く、ネットの高さは低くされ、ルールも少し変えて行われています。このように、特定の障害を考慮してアレンジしたスポーツもあります。
  アーチェリーなどは、障害のある人も、障害のない人の条件のもとに行っています。

 また、最近では、車椅子ダンスや車椅子テニスのニューミックスなど、障害のない人とある人が一緒にプレーをしたり、障害のない人が車椅子バスケットボールを一つのスポーツとして楽しむようにもなってきています。障害のない人が車椅子に載ったり、座ったままの姿勢やアイマスクをつけるなど、障害のある人とない人の両者が同じ条件になるように工夫をすれば、一緒にスポーツを楽しむことができるのです。
 また、障害者のある人のために工夫したスポーツが、子供のスポーツに適していたり、高齢者、障害のある人までが同じスポーツを楽しめるわけです。
 
このように、障害者のスポーツは、障害があっても活用できる能力を生かしてプレーできるように考案されたスポーツ、ちょっと工夫して、その場その場に適した形にしたスポーツということから、adapt(適応させる)という語を用いて「アダプテッド・スポーツ(adapted・sports)」と称されています。この意味では、障害者のスポーツだけではなく、高齢者のスポーツ子供のスポーツもアダプテッド・スポーツに含まれます。かつては「障害のある人のためのスポーツ」であった障害者のスポーツは、「何らかの障害のある人も行えるスポーツ」へと、その概念を変えつつあります。

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